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2013/12/27

介護保険制度の見直し(平成26年度改正に向けて)

厚生労働省介護給付費分科会が17日前の平成25年12月10日に「介護保険制度の見直しに関する意見(素案)」を公開した.ので,タブーに優しく触れてみます.

メインテーマは地域包括ケアシステムの構築と認知症施策の推進.まず,平成23年度の介護予防事業の実績を確認.





   


二次予防事業のうち主にセラピストが関係する,運動器機能向上をメインにした通所型介護予防事業は約115億円弱.訪問型介護予防事業は約9億円.二次予防事業の対象者か確認するための25項目の基本チェックリストの郵送と判断に費やした費用は150億円.


・・・費用対効果は?


確かに予防の場合は効果を判断することが難しい.感染症と違って健康の定義は広く,健康に影響を与える要因は多過ぎる.「何か」を予防できたのか,何もしなくても予防できたかのを比較するにも難しい.でもだからといって,このまま効果を求められない支援で請求し続けることに不安を感じる.職域拡大のチャンスだと飛びつくのは怖い.やっぱ辞めた,と急に国から告げられる可能性がある.

これを踏まえて,介護予防の推進と在宅サービスについての意見から一部を抜粋します.



「これまでの介護予防の手法は,心身機能を改善することを目的とした機能回復訓練に偏りがちであり,介護予防で得られた活動的な状態をバランスよく維持するための活動や社会参加を促す取り組みが必ずしも十分ではなかったという課題がある」



「これからの介護予防は,機能回復訓練などの高齢者本人へのアプローチだけではなく,生活環境の調整や,地域の中に生きがい・役割を持って生活できるような居場所と出番作りなど,高齢者本人を取り巻く環境へのアプローチも含めた,バランスのとれたアプローチが重要である」



「このような効果的なアプローチを実践するため,地域においてリハビリテーション専門職等を活かした自立支援に資する取組みを推進し,要介護状態になっても,生きがい・役割を持って生活できる地域の実現を目指すことが適当である」



やったー,やっとわかったか!・・・で,具体的な手段は?



農作業をやっている人は筋力があるからといって,野球が上手くなるわけではない.運動機能が向上→活動性が向上→自信と意欲が向上→生きがいある人生を送れる,という滅茶苦茶な学習転移の理屈だけど絶対的な神話に,疑問を投げかけるだけでも前進と思う.


でも,セラピストが地域に多く配置されるようになっても,セラピストの習慣と価値観が変わらなければ何も変わらないだろうなぁ.「あ,生きがいですね,じゃあ下肢筋トレと骨盤の可動域訓練から始めます・・・10年くらい?」と,なるんじゃないかと思うのは,ボクが心配性だからです,きっと.

大事にしていたランの花を育てるための,特別な日は家族にご飯を作るための,孫に手工芸を作品を送り続けるための,機能訓練であれば,正確ではなくても良いので具体的な期日があれば(たとえば6ヶ月とか9ヶ月とか),リハビリテーション専門職としての存在価値は社会的にある.作業療法士であろうと,理学療法士であろうと.



さて,この資料を集めたのは,通所の責任者らから「作業療法の考え方に基づいてシステムを改変するので,通所利用者の考え方を変換してもらうために講義をしなさい」と言われことが動機.まぁ,こうなるように1年かけて準備をしていたわけだけど.私見は極力控えて,事実はできるだけ正確に伝えた.介護保険の歴史と現状,健康や運動学習の理論,介護保険が向かう未来とその根拠について,わかりやすさを意識してプレゼンした.


「あなたたちの未来は,あなたたちが作るのです.私たちは手伝いをするのです.あなたちがそれぞれ,自分はやりたいことができているから不健康ではないと感じるために,私たちと共に模索し,計画し,実施し続けましょう」と伝えた.

根拠も手段も曖昧ですが,でもだからこそ共に,と付け加えて.これが良いか正しいかはわからないけど,隠したり誤摩化すよりは誠実だと思っている.少なくても,運動しないと寝たきりになりますよと,運動の程度と寝たきりへのプロセスを曖昧にしたまま脅すよりは後味が悪くない.


何をやるかよりも,なぜやるのかを初めに伝えることが重要だと思っていた.今回の介護保険の見直し案は役に立ったけど,データや施策案はあくまでも手段.様々な立場から批判的に吟味できる余地がある資料であることを理解しつつ,自分が伝えたいことはブレないように伝えたい.自分を批判できる余裕も保ちつつ,謙虚かつ批判だけの専門家にならないように利用者,家族,職員に伝え続けたい.



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