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2012/01/11

成人の日に  谷川俊太郎  Coming of Age Day

人間とは
常に人間になりつつある存在だ
かつて教えられたその言葉が
しこりのように胸の奥に残っている

成人とは人に成ること
もしそうなら
私たちはみな
日々成人の日を生きている

完全な人間はどこにもいない
人間とは何かを
知りつくしている者もいない

だからみな問いかけるのだ
人間とはいったい何かを

そしてみな答えているのだ
その問いに
毎日のささやかな行動で

人は人を傷つける
人は人を慰める
人は人を怖れ
人は人を求める

子どもとおとなの区別が
どこにあるのか
子どもは生まれでたそのときから
小さなおとな
おとなは一生大きな子ども

どんな美しい記念の晴着も
どんな華やかなお祝いの花束も
それだけでは
きみをおとなにはしてくれない

他人のうちに
自分と同じ美しさをみとめ
自分のうちに
他人と同じ醜さをみとめ

でき上がったどんな権威にも
しばられず
流れ動く多数の意見に
まどわされず

とらわれぬ子どもの魂で
いまあるものを組みなおし
つくりかえる

それこそがおとなの始まり
永遠に終らないおとなへの出発点

人間が人間になりつづけるための
苦しみと喜びの方法論だ


『魂のいちばんおいしいところ』より

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