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2011/04/12

ADOCでOT目標設定した過程(ver.100年の花) ADOC process of setting goals in OT

できることをやろう。
できるだけやろう。


先日、ADOC(作業選択意思決定支援ソフト)を使って
特養ホームに入所する女性の作業療法ゴールを一緒に確認した。

とにかく歩けるようになりたいと彼女は話した。
自分で歩けること、1人で安全に移乗できること、
ベッドから立ち上がること、自立してトイレに行くことを希望した。
そして、蘭の花を育てることが大切なことで、
自分にとって大切な役割であること、
今は自宅の庭に咲いた蘭の写真を眺めることが大切だと話した。




ADL能力の維持が、ここ数年の彼女の個別支援目標になっていた。
自立度を維持をすることは、本人が望む限りにおいて大切だと思う。
でも、生活動作の能力が維持できたとして、
それだけが人生の何よりも大切なことになるかと疑問に思っていた。


立ち上がり、歩行、移乗、トイレ動作については、
どこでどのようにできることを希望するのか確認した上で、
作業療法の目標とすることを説明した。
ただし、全く1人で転倒の危険なく安全にできるようになるのは、
難しいと予測されることを補足した。

車いすに乗っていても、車いすに乗るために援助が必要でも、
蘭の花を育てることはできると思われることを説明した。
どうして蘭の花を育てるのが大切なのか、
これまではどこでどうやって育てていたのか、
どこまでの援助は利用してもいいと思っているのか、
協力してくれる家族はだれで、どこまでの援助が可能だと思うのか、
彼女に確認した。

練習によって得られる動作の予後も含めて、
すぐにADOCに入力して印刷した。
夕方には家族にPDF資料を手渡し、
作業療法ができることについてまず説明をした。
それから、本人の希望を代弁し、協力を要請した。




生活活動の回復作業(訓練)あるいは模擬作業(練習)は、
大きな成果を期待できないこと。
適応作業(代償)も考慮するが、
自立性・安全性・効率性について限界もあること。
彼女が自分に期待する役割は花を育てることができる人であること。
習慣化するまで継続的な人的支援を施設内で確保することは、
難しい可能性があること。
身体と精神機能を考慮すると、
少しの援助があれば花を育てることはできると予測していること。
過去に価値のあったやりたいことが、
現在の生活に明確な意味を与える可能性があること。
作業療法士が確実に直接支援できるのは週に2回程度であること、
など、表現はだいぶ噛み砕いて説明をした。


それから家族が彼女に期待する役割や生き方のこと、
家族が継続して可能な支援の内容と時間、
準備することができる道具や物品についての話を聞いた。

蘭の花を育てることができる人を取り戻すために、
物、サービスの環境を準備することになった。
彼女にも説明をして同意を得ることができた。
職員の時間を削ることなく、歩行訓練の時間を削ることもなく、
本人がやりたいと思う意味と目的のある作業に、
参加することを支援できると思う。

数週間か長くても3ヶ月以内に再評価を行い、
蘭の花を育てる活動ができているか、そのことに満足しているかで
支援の成果を判断したいと彼女と家族に説明をした。
100年以上も一生懸命に生きてきた彼女は、
大切なことを大切にできる権利がある。
ボクはそう思うと伝えた。




特養ホームに就職して1年が経過した。
作業療法は特養ホームに必要あるのか、と毎日何度も自問を続けてきた。
もう少し。あと一歩。

ADOCは何のためのアプリか?

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